『田園の詩』NO.63  「三 楽」 (1997.2.18)


 壺には三つの楽しみ方があるといわれます。まず、壺そのものの姿を楽しむ。第二に、
花を生けて楽しむ。第三に、酒を入れて(飲んで)楽しむ。これを≪壺の三楽≫というそ
うですが、このように、同じ品物でも発想次第では二度も三度も利用できる(楽しめる)
ものです。

 ところで、我が家では寝る時に湯タンポを愛用しています。15年前、子供ができたと
き、思い出したように買い求めました。

 今のはポリエチレン樹脂でできており、昔の金属製のように布を巻いたりする手間は
ありません。やけどの心配もなく取り扱いが大変いいのです。

 すっかり気に入り、家族全員湯タンポを使うことにしました。昔使っていた覚えが有
りますが、結局元に戻ったことになります。

      
      我が家の愛用の湯タンポです。赤ちゃん用のものですが、とっても取り
      扱いが楽で、 しかも、朝までしっかりと暖かさを保ちます。


 この湯タンポ、省エネが叫ばれている昨今、最良の一品であると大いに宣伝したい
ものです。湯はガスを使わなくても、大きなヤカンをストーブの上に乗せておけばひ
とりでに沸きます。その湯でお茶を飲み、茶碗洗いをし、残りを湯タンポに入れます。

 一晩の役目を終えた湯は、洗濯や掃除用に使います。≪湯の三楽(三利用)≫が
成立するのも、湯タンポがあればこそです。

 上着やズボンも三度は利用できます。最初は外出用にし、少しヨレてくると仕事着
にします。私は一日中筆を作っている職人です。職人にキチンとした服は不要です。
汚れを気にしていたら仕事になりません。ヨレた服こそが職人の正装なのです。

 普通なら、ここでお役目終了でしょうが、最後のご奉公として、山芋掘りの衣装に
なってもらいます。何人かと連れだって行くのですが、服装は皆ヨレヨレです。

 しかし、ボロ着こそ山芋掘りの正装だと私達は自負しているのです。ボロ着なんて
ミミッチイ話のようですが、キレイな服では仲間に入れてもらえません。

 リサイクル意識の高まりは結構なことですが、だからといってすぐに回してしまう
(捨ててしまう)のではなく、最後まで徹底して使い切ることが何より大切だと私は
思います。                     (住職・筆工)

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